出資しているのは誰?2015年10億円以上の大型資金調達12選

query_builder2015/11/17 folder分析
起業家

はじめに

ベンチャー界隈では連日のように資金調達に関する報道がなされていますが、1億円以上の資金調達になると大きな注目を集めます。大きな額の資金調達をしている企業は、事業が継続的に成長し、さらなる事業拡大を、もしくは上場を目指してさらに企業を成長させようと努めています。今回はその中でも10億円というベンチャー企業にしては比較的大きな額の資金調達を2015年に行った企業を12社ピックアップしてみました。10億円規模ともなると大勝負をかけている企業および経営者の意気込みが伝わってきます。

目を引くのは圧倒的に「Spiber」

*1:オプト,グローバル・ブレイン,WiL,伊藤忠テクノロジーベンチャーズ,ANRI,電通デジタル・ホールディングス,GMOベンチャーパートナーズ,リンクアンドモチベーション,グリーベンチャーズ,Global Catalyst Partners Japan
*2:INCJ,三菱UFJキャピタル,ジャフコ,東京大学エッジキャピタル,みずほキャピタル
*3:エムスリー,独立行政法人科学技術振興機構,京大ベンチャーNVCC1号投資事業有限責任組合,CYBERDYNE,JTファイナンシャルサービス,澁谷工業,ジャフコ,DCIハイテク製造業成長支援投資事業有限責任組合,DBJキャピタル,東京都ベンチャー企業成長支援投資事業有限責任組合,ニッセイ・キャピタル,三菱UFJキャピタル,東京大学エッジキャピタル  

100億円近くの資金調達をしているのがSpiber(スパイバー)です。こちらの企業はバイオ系ベンチャーであり、慶應SFCの4年生だった現CEOの関山氏が研究を開始し、2007年に創業したベンチャー企業です。本社が山形県にあり、クモ糸由来のたんぱく質をベースに人工合成する技術を用いて合成クモ糸繊維を創出している正真正銘のバイオベンチャーです。 これまで9回の資金調達を行い、合計146億円の調達をこれまでにしています。クモの糸を利用するというまさに「雲」をつかむようなアイデアで起業をし、事業をここまで導いたことは驚くに値します。政府系のプロジェクトにも採択されており、協力なバックアップをもとにさらなる事業の飛躍が期待されます。

参照:第三者割当増資により 95 億 8,416 万円を調達

続いては、2015年に上場を果たしたメタップスの43億円が目立ちます。 2015年2月に資金調達を実施し、その後、上場しました。メタップスは米国のベンチャーキャピタルや事業会社からの出資によって調達を行っております。米国のVCから出資をうける日本の会社はまだまだ少数といえます。メタップスは大型資金調達の背景としては、アプリ開発者向けの分析ツールを開発してきましたが、AI分野の強化をCEOの佐藤氏が明言しており、大型投資をそちらの事業の強化に使っているとみられています。佐藤氏は15歳からビジネスをはじめその後、早稲田大学に入学するもすぐに大学を休学しソーシャルメディアやSEOの分野でビジネスを展開し、現在のメタップスの事業につながっているスマートフォン向けの事業に切り替えています。大学をすぐに中退するなど並の起業家とは違う覚悟で事業に取り組んでいたことがわかります。上場後は赤字決算になるなど厳しい船出となっていますが、マネタイズに時間のかかる事業に取り組んでいることから数年後にさらに飛躍する可能性があります。

参照:メタップスが43億円の資金調達

大型資金調達に参画しているVCはどこなのか?

大型資金調達にはさまざまなVC(ベンチャーキャピタル)が絡んでいます。10億円以上の調達ともなると10社以上が調達にかかわってくるため初期の調達以上に関係者との調整が難しいことがうかがえます。非公開のところもありわからない部分が多いですが、ネクストの約40億円調達における出資元となった楽天が最も大きい出資となっています。

その他のVCとしては、事業会社では、グリーのベンチャーキャピタルが3社の資金調達にかかわっており、存在感を発揮しています。リクルートや伊藤忠商事、オプトといった事業会社も継続して大きい資金調達に関係しています。一方、シードに出資をしているANRIもラクスルに出資する等、成長の見込める会社には積極的に投資を行っているのでしょうか。 銀行系は、Quantum Biosystemsとサイフューズに出資をしている三菱UFJキャピタルが目立ちます。上記の2社はDNA解析やバイオ3Dプリンタといったバイオベンチャーにカテゴライズされる事業であり、資金を非常に要する事業でかつ、ネット系の会社があまりなじみのない分野でもあるため銀行系のVCの存在は重要であることは言うまでもありません。 また、上記の2社に三菱UFJキャピタルと一緒に出資しているのが、東京大学エッジキャピタルです。大学のVCという独特の存在でありながら芽が出そうなベンチャーの資金調達にかかわっており東京大学エッジキャピタルの動向は注目です。また、国内ベンチャーキャピタルの雄であるジャフコもサイフューズに出資をしています。

上場までは一体何社がいけるのか?「freee」「ラクスル」は堅調か

Spiberは上場後も評価が得られる企業と期待されています。その他比較的分野の近い企業として、Quantum Biosystems,サイフューズがあります。DeNA解析装置を開発している大阪大学発のベンチャーですが、おそらくもう一回大きな資金調達を経て上場フェーズに入るのではないでしょうか。マーケット的にまだシェアを獲得できているわけではないのでこれからビジネス力が問われるフェーズに入っていくでしょう。また、サイフューズは佐賀大学の教授によってはじめられた大学発ベンチャーであり、血管を作成する3Dプリンタ技術など世界で戦える技術力のあるベンチャーです。バイアウトもあるかもしれませんが、順調に伸びれば上場も間違いないでしょう。マーケットの大きさや先行している企業がないため、さらに資金調達が行われる次のタイミングがIPOのタイミングかもしれません。

freeeとラクスルの2社は上場に近いベンチャーといえます。 freeeは利用実績のある事業所数が40万を超え、会員数の面では順調な成長を見せています。 会員数の伸びが順調に続いている以上は売上も比例して伸びるので急激に業績が悪くなることはないでしょう。 懸念点はCM等のマスマーケティングの費用が効果があまりでず費用がかさんでしまうことがネット系企業に見られます。TVCMは基本的にGRP(延べ視聴率)を鑑みてメディアバイイングが行われ、視聴数がある程度担保できますが、ネットのターゲティング広告と異なりターゲットの層を細かく指定できないため効果がでないのでリスクは少なからずあります。freeeの場合はマネタイズがすでに十分できているので想定の範囲内でマーケティングを行っているのではないでしょうか。

「クラウド会計ソフト freee」 有効事業所数(※1)が40万を突破*1 (※1)「クラウド会計ソフト freee」を実際に利用した事業所数。freee の他サービス(クラウド給与計算ソフト freee等)を利用しているが、クラウド会計ソフト freee の利用実績のないアカウントは除く。

オンラインで行う印刷サービスを提供するラクスルは会員数、売上ともに伸びを見せています。ATカーニー出身で起業家としても注目をあつめる松本氏と「印刷」というこれまでの旧態事業領域かつ、寡占市場に挑んでいるラクスルはベンチャー界隈のみならず多くの注目を集めています。

小さな上場より赤字を掘ってでも大きく成長する——ネット印刷のラクスルが40億円の資金調達

エコ配、origami、スマートニュース、Rettyとサービス自体の利用者数が伸びており、直近ではないかもしれませんがこのまま上場可能な企業群かと思います。デザインの良さや、これまでのサービスとの差別化ができているのでユーザーから愛されやすいサービスをつくっていることがこれらの会社の特徴といえます。スマートニュースについては、先行して上場したgunosyもいることから上場に関しては特に意識しているかもしれません。今回あげた12社はすでに上場しているライフネット生命とネクストを除くと時間に程度はあれど上場路線と言えるでしょう。

大型調達企業のCEO12人を見てみよう

ここで大型調達したCEO12人の経歴を見てみましょう。ここまで成長させる経営者に関して、どういった特徴があるのでしょうか?

1.関山和秀 Spiber株式会社

1983年生まれ。慶應義塾高校から2001年、同大学に進学。環境情報学部冨田勝教授のバイオテクノロジー論に感銘を受け、同学部に進学し、富田教授の研究室に1年次から所属。2002年に山形県鶴岡市にある慶應義塾大学先端生命科学研究所に拠点を移動。2004年からクモ糸人工合成の研究開始。博士課程在学中の2007年、学生時代の仲間と共にスパイバーを設立、代表就任。2009年にはVCから総額3億円の資金調達に成功。2013年には小島プレス工業と共同で、月産100kg以上の人工糸生産能力を持つ試作プラントを立ち上げ。

2.佐藤航陽 株式会社メタップス

1986年生まれ。2006年、早稲田大学法学部に入学。2007年9月イーファクター株式会社(現株式会社メタップス)設立。代表取締役就任。2008年大学中退。2011年6月Metaps Pte.Ltd.代表取締役就任。2013年12月盈利点信息科技(上海)有限公司。

3.松本恭攝 ラクスル株式会社

1984年生まれ。富山県出身。大学卒業後、外資系コンサルティング会社のA.T.カーニーに入社。クライアント企業のコスト削減プロジェクトに従事する中で、印刷費が最もコスト削減率が高いことに気付き、印刷業界に興味を持つ。調べてみると6兆円の市場規模がある印刷業界に効率化が行われていないことに注目し、インターネットの力で印刷業界の仕組みを変えるべく2009年9月にラクスル株式会社を設立。印刷会社の非稼働時間を活用した印刷のEコマース事業を展開する。現在は中小企業のチラシを使ったオフラインでの集客活動を支援する「集客支援プラットフォーム」事業の展開を加速させている。

4.井上高志 株式会社ネクスト

1968年生まれ。神奈川県出身。青山学院大学経済学部時代に大きなふたつの転機を経験し、「人生のスイッチ」がONになる。大学卒業後の1991年、リクルートコスモス(現・コスモスイニシア)に入社するが、3ヶ月で親会社のリクルート社に出向・転籍。新卒・中途採用の企画営業担当となり、常にトップクラスの業績を維持し続ける。「不動産業界を変革したい」「人と住まいのベストマッチングを実現したい」。そんな志の下、1995年、会社を退職し、まずは個人事業主として起業。1997年3月、株式会社ネクストを設立し、代表取締役就任。住宅・不動産情報ポータルサイト「HOME’S」を設立し、日本最大級の規模に育て上げる。2006年10月、東証マザーズ市場に上場。同時期、地域コミュニティサイト「Lococom」をスタート。著書として『「普通の人」が上場企業をつくる40のヒント』(ダイヤモンド社)がある。

5.佐々木大輔 freee株式会社

東京育ち。一橋大学商学部にてデータサイエンスを専攻。在学中、派遣留学生として、ストックホルム経済大学へ。学生の頃からインターネットリサーチ会社のインタースコープ(現:マクロミル)でインターン及び契約社員として、リサーチ集計システムや新しいマーケティングリサーチ手法を開発していた。卒業後、博報堂に入社し、マーケティングプランナーとしてクライアントへのマーケティング戦略の立案に携わる。 未公開株式投資ファーム CLSAキャピタルパートナーズでの投資アナリストを経て、株式会社ALBERTにて執行役員就任。企業財務・資金調達の管理に加えて、同社主力商品となるレコメンデーションエンジン、「おまかせ!ログレコメンダー」の開発も担当。2008年、Googleに参画し、日本におけるマーケティング戦略を立案する。Google マップのパートナーシップ開発や、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括に従事。中小企業セグメントにおける同社のアジア展開及び組織拡大を推進した。この後、freee株式会社を創業。

6.出口治明 ライフネット生命保険株式会社

1948年生まれ。三重県出身。京都大学を卒業後、1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。また、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正を担当。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立。代表取締役社長に就任。2008年、生命保険業免許を取得し、それに伴いライフネット生命保険株式会社を開業。

7.本蔵俊彦 Quantum Biosystems Inc.

東京大学大学院情報理工学研究科にて、特任助手としてヒトゲノム解析等の研究に従事。その後、国内証券会社でエクイティアナリストを経て、戦略コンサルティングファーム、マッキンゼーカンパニーでマネージャー、及び産業革新機構ディレクターを務める。経営支援、投資事業分野において10年以上のビジネス経験を有する。東京大学大学院新領域創成科学研究科修士、米国コロンビア大学にてMBA取得。

8.片地格人 株式会社エコ配

1969年生まれ。同志社大学卒業。野村證券に入社しトップセールスを記録しながら、IT企業創業者らとの太い人脈を構築。30歳で光通信キャピタルにてベンチャーキャピタルの最高執行責任者を務める。15社をIPOに導くなど金融マン・経営者としてのキャリアを積み上げる。その後も12店舗を有する、弱体化した美容グループを買収して事業再生をしたり、物流不動産の仲介会社日本レップ(現在はグッドマンジャパン)をマザーズ上場に導いたりと、経営手腕をいかんなく発揮。物流不動産を手がけるアール・アイ・シー・マネジメントを経て、2010年、エコ配代表取締役社長に就任。他5社の社外取締役も務めている。

9.康井義貴 株式会社Origami

幼少期をトロント、ニューヨークで過ごし、16歳でeコマースビジネスを立ち上げる。大学卒業後 米系投資銀行リーマンブラザーズでM&Aアドバイザリー業務に従事。ベンチャーキャピタルDCM(Doll Capital Management)で、日中米スタートアップの投資分析及び投資先企業の経営戦略を支援。 アジアでスタートアップ活性化支援に携わり、一般社団法人ThinkAct Foundation代表理事。2012年2月株式会社Origamiを創業し、代表取締役CEO就任。

10.口石幸治 株式会社サイフューズ

1995年から松下通信工業(現:パナソニックモバイル)において携帯電話のエンジニアを務める。商品企画、詳細部分の設計、生産立ち上げ支援など幅広い業務に携わる。2001年からRYUKA国際特許事務所で、発明の発掘と出願を支援。2005年からマッキンゼー・アンド・カンパニーで、国内外製造業のオペレーション改善を中心に、大手電機メーカーのビジネスデューデリジェンス、外資系ヘルスケア企業の組織設計およびM&A後の支援等に従事。2009年同社を退社してサイフューズ設立。

11.浜本階生 スマートニュース株式会社

2005年、東京工業大学工学部情報工学科を卒業。2007年に『EatSpot』で価格.com WEBサービスコンテスト最優秀賞を受賞。2009年にも、『Blogopolis』でヤフージャパン、インターネットクリエイティブアワード一般の部でグランプリ等を受賞。共訳書に『実用Git』(オライリー・ジャパン)がある。Webに氾濫する情報の整理及び可視化を扱っている。

12.武田和也 Retty株式会社

1983年、愛媛県生まれ。青山学院大卒。IT企業に勤務後、アメリカへ。2010年末に「食を通じて世界中の人々をHappyに」をビジョンにRettyを創業。2011年にサービス開始。

おわりに

上記の経営者の出身大学をみてみると、東大、京大、一橋、東工大、慶應、早稲田、青山学院、同志社と有名大学出身のCEOが目立ちます。中退したメタップス佐藤氏含めると全員が有名大学出身でした。やはり、資金調達において重要な「信用」、そして「コネクション」の部分において有名大学出身者ということは有利に働くのかもしれません。また、大型調達が必要なバイオ系の企業は必然的に有名大学の研究経験のバックグラウンドになりがちなので高学歴になりがちです。

今回まとめた資金調達企業群から、ライフネット生命やネクストに続く、上場企業がでてくることは間違いないでしょう。ぜひ絶えずウォッチしておくことをおススメします。